昨年までの研究で、PLK(Polo-like kinase)が細胞周期、特にM期において重要な役割を果たしている事以外に、卵巣や子宮においての何らかの機能をもつことが、PLKの免疫染色法において示された。 今年度は、昨年までの事実を基にして、子宮癌患者の標本をPLKの特異的抗体を用いて免疫染色法を行った。その結果、1)組織学的に悪性度のgradeの高い標本において、PLKの強い染色パターンを示した。2)癌組織が近傍へ浸潤している部分により強いPLKの染色を認めた。3)癌組織が血管内腔へ浸潤している部位ではPLKは強く染色された。他方、我々はNIH3T3正常線維芽細胞にPLKを過剰発現させて、ヌードマウスに移植したところ、ヌードマウスに腫瘍形成が観察されたことを報告した。この形成された腫瘍から標本を作成し、PLKの免疫染色を行うと周辺組織に浸潤している部位でPLKの強い染色パターンが観察されている。我々が子宮癌患者とヌードマウスにおいての腫瘍で観察したPLKの染色パターンと合わせて考えると、PLKの発現の程度が強いほど、浸潤しやすく転移を起こしやすい可能性が示唆された。このことは、子宮癌患者におけるPLKの発現の程度が強いほど、臨床的悪性度が高かった事実と一致している。子宮癌ではPLKの発現の程度によって、患者の予後が評価できるのかもしれない。我々の得た標本の患者は術後生存中であり、今後再発や5年生存率をPLKの発現の程度と比較検討していきたい。
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