研究概要 |
従来ドパミンの前駆体にすぎないとされてきたアミノ酸「ドーパ」の神経伝達物質仮説を提起、検証してきた。本研究においては、ラット孤束核単離細胞のパッチクランプを施行し、ドーパの電位依存性カルシウムチャネル(HVA)電流増大作用の解析を行ない、以下の知見を得た。1)ドーパ(L体,1μM)適用によって生じるHVA電流(I_<Ba>)増大(約30%)は、-50mVから-30mVにかけての、HVAチャネル活性が比較的低い電位においてより顕著であった。2)このドーパ応答の大半は、競合的ドーパ拮抗薬DOPA methyl ester処置によって抑制された。3)同濃度のドパミンはHVA電流に対して無作用、一方、noradrenalineはHVA電流を顕著に抑制した。従ってこのドーパ作用はカテコラミンへの変換を介さない、ドーパ自体の作用であると考えられる。4)このドーパ応答は、10,100nM,1μMと濃度依存的に増大した。5)パッチピペット内GDP-βS添加は、ドーパのHVA電流増大成分を抑制した。孤束核単離細胞に発現するドーパ受容体はGタンパク質連関型受容体である可能性が高い。本研究によって、孤束核におけるドーパの興奮性作用機序解明にあたっての電気生理学的および分子基盤となる成果が得られた。
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