脳ミクロゾームでのドパミン生成 ラットおよびサル脳組織からミクロゾームを調製し、チラミンを基質としてドパミン生成活性を測定した。チラミンを基質として用いた酵素反応で、Hydroxyphenylacetic acidの生成が見られ、調製した脳ミクロゾーム画分にはMAOが混在していると考えられた。ミクロゾーム調製方法を検討したが、MAOの混入はなくすことは出来なかった。7種のMAO阻害剤を用いて予備検討したところ、ClorgylineやQuinacrineなどはMAO活性のみならずCYP2D活性を阻害することが明らかになった。Pargylineは、MAO活性を阻害しCYP2D活性阻害効果が弱いことから、本試験ではPargylineを酵素反応液に添加することにした。更に、P450酵素反応液のpHをpH7.4からpH6.5へ変更した。このような酵素反応条件で、チラミンを基質に酵素反応を行ったところ、ラットおよびサル脳ミクロゾームでNADPH依存性にドパミン量が増加した。このことは、脳組織においてもP450酵素依存でドパミンが生成されることを示している。脳部位を限定するために、ラット脳を大脳皮質、線条体、小脳、脳幹に大きく4つにわけミクロソーム画分を調製した。放射性標識にチラミンを用いてドパミン生成活性を測定したが、明確な部位による活性差は見られなかった。 CYP2Dの誘導剤の検討 CYP2Dの誘導剤の探索として、いくつかの化合物をラットに投与した結果、トルエンが、脳特異的なCYP2D(ラットCYP2D4)のmRNAおよびProteinの誘導を引き起こすことを明らかにした。しかし、トルエン自身が脳内にアミンに変動が起こる可能性があることから、CYP2D誘導による脳内アミンの測定実験にはトルエンは不適であると考えられた。アミンの変動を引き起こさない、新たなCYP2D誘導剤の探索が必要である。
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