研究概要 |
本研究は,壁せん断応力がどのようなメカニズムで内皮細胞の物質輸送を制御しているかを把握することを目的とし,実際の生体内の流れを反映する第一段階として2枚の平行平板の間に段差を設け,その間に流体を流し段差後流で剥離流れをつくり,この剥離流れの特徴的な領域(逆流域や再付着点)において内皮細胞の物質輸送能変化に関して調べた.さらに,壁せん断応力がどのようなメカニズムで内皮細胞の物質輸送を制御しているかを把握するために,内皮細胞の情報伝達物質である細胞内カルシウムイオン濃度に着目し,壁せん断応力を負荷した際の細胞内カルシウムイオン応答を調べ,以下の結論を得た. 剥離流れ場で特徴的な領域である再付着域と発達域で高分子物質の取り込みの測定をおこなった.高分子物質は蛍光標識したアルブミンを使用し,共焦点レーザ顕微鏡で蛍光強度を測定し,取り込みの評価をおこなった.その結果,再付着域では発達域に比べ取り込みが増加し,せん断応力やせん断応力の勾配が細胞の取り込みに影響を与える事を確認した. 発達域でのカルシウムイオン応答の時間経過を調べた.内皮細胞は壁せん断応力が負荷されると細胞内で急激なカルシウムイオン濃度上昇が見られた.壁せん断応力負荷直後では約30%の内皮細胞がカルシウム応答を示したが,時間経過とともにその応答数は減少し,24時間後では約5%まで減少し,細胞内の情報伝達はせん断応力の負荷時間の経過とともに減少することを確認した
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