研究分担者 |
熊谷 静似 ソニー(株), 主任研究員
久保田 均 東北大学, 大学院・工学研究科, 助手 (30261605)
安藤 康夫 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (60250726)
菅原 淳一 ソニー(株), 研究員
中塩 栄治 ソニー(株), 研究員
韓 秀峰 東北大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員
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研究概要 |
スピントンネル素子は高感度再生磁気ヘッドとして実用化されることが期待されている.しかし,実用化にあたっては,高い素子抵抗に起因する高ノイズ,低転送速度の問題を解決しなければならない.また,ヘッド作製プロセスの面では現在実用化されているGMRヘッドのデザイン,バイアス磁界印加法を直接適用できない問題がある.本研究ではこれら実用化にあたって解決すべき課題に対して東北大学のグループとソニー(株)のグループが協力して研究をすすめた.東北大学のグループは低抵抗化のアプローチとして絶縁層の薄膜化を目指した.絶縁層表面を伝導性原子間力顕微鏡(c-AFM)を用いて局所的伝導特性を調べ,Al膜厚8Å下では絶縁層にピンホール欠陥があることを明らかにした.ピンホールを低減するため,種々のバッファー層の材料を検討し,Cuバッファーを用いAl膜厚が6.6Åのとき最も抵抗化(80Ω・μm^2)かつ高TMR比(30%)の接合を得た.Fe-Niバッファーの場合,更に絶縁層を薄膜化できる可能性を示した.また,c-AFMを用いた電流分布の解析により,熱処理時に絶縁層面内の均質化がおこりTMR比が増加すること,及び,抵抗値の減少に伴い低絶縁障壁部分が増加しTMRが減少することを示した.ソニーグループはヘッドのデザインの検討を行った.フラックスガイドを用いて絶縁層を記録媒体に直接接触しないデザインを考案し,かつ,接合面積の増加による低抵抗化を図った.現行のGMRヘッドで用いられている永久磁石によるバイアス磁界印加方法はトンネル素子の電気的ショートを招く可能性が高い.そこで,フラックスガイド部のFe-Ni上にCu/Ir-Mnを積層し,Cuを介した長距離交換相互作用によりFe-Niにバイアス磁界を印加することを考案した.以上のデザインに基づきAl膜厚8Åの絶縁層を持つスピントンネル再生磁気ヘッドを試作した.試作したヘッドをヘリカルスキャン方式の磁気テープ再生システムに組み込み,再生波形を得た.長さ0.1μmのフラックスガイドを持つヘッドの出力は1.75mVp-pであり,従来方式のヘッドにくらべ2.4dB高い出力電圧を得た.この結果より,長距離交換相互作用およびフラックスガイドを組み合わせた用いたヘッド構造がスピントンネル再生磁気ヘッドに非常に適していることを実証した.
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