研究概要 |
本研究では,カーボンナノチューブ(CNT)の電界放出型電子源としての応用可能性を示すことを目的として,CNTの合成法の開発からCNT電子エミッタの電子源としての基礎特性を評価して,以下の結果を得た。 1.カーボンナノチューブの成長条件 純度の高い多層CNTおよび中心までグラファイト層が詰まったナノグラファイバーの成長条件を見い出した。また,単層CNTの多量合成に有効な触媒としてRh-Ptなどを見出した。 2.ナノチューブ清浄表面からの電子放出と吸着分子の影響 清浄表面のCNTからは電子の電界放出は,先端部の五員環から優先的に起こり,また,残留ガス分子は五員環位置に選択的に吸着し,そこから電子の共鳴的トンネル効果が起き,電子放出が増強する事を見い出した。 3.カーボンナノチューブ電界放出エミッターに及ぼす雰囲気ガスの影響評価 種々の雰囲気においてMWCNTからの放出電流の経時変化を測定した結果,酸素,メタンおよび一酸化炭素がCNTエミッタの寿命に最も悪影響を及ぼすことを明らかにした。 4.ナノチューブ電子源のエネルギー分布,輝度および放射角電流密度 1本の多層ナノチューブから放出される電子のエネルギー幅は330meV,放出電流密度は10^8A/cm^2,放射角電流密度は10^<-7>A/srを得た。輝度としては,加速電圧100kVにおいて10^<10>A/cm^2・sr以上が期待される。 5.超高輝度ナノチューブ光源管の試作 高電圧蛍光表示管をベースにその構造に改良を加えるとともに,陰極にナノグラファイバーを使用することにより,超高輝度(1x10^6cd/m^2)の光源管を試作することに成功した。この光源管の輝度は従来の高電圧蛍光表示管のそれの10倍を超える。
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