研究概要 |
本研究では,25気圧までの水素,窒素あるいはそれらとアルゴンとの混合ガス雰囲気下で金属を溶解しそれを一方向凝固させることによって気泡(ポア)に直接的な方向性をもたせたロータス(レンコン)型ポーラス金属を作製した.これまでに作製した主なものは,銅,銅-アルミニウム合金,黄銅,鉄,鉄-クロム合金,ステンレス鋼,ニッケル,ニッケル基超合金,マグネシウム,アルミニウム,アルミニウム合金,チタンなどである.このうち平成13年度の研究でポーラス化に成功した金属は黄銅,鉄-クロム合金,ステンレス鋼,ニッケル基超合金,マグネシウム,チタンである. さらに,これらのロータス材料のポアサイズは溶融金属の凝固速度に大きく依存すること,ポロシティは水素あるいは窒素のガス圧力ばかりではなく,不活性ガスであるアルゴンの影響も大きいことを明らかにした.また,デンドライト組織はポアの成長に大きく影響しポア形状を変化させることを明らかにした.水素を用いて作製したポーラスマグネシウムは比重が1以下の水に浮く超軽量材料として注目される.ポーラスチタンを作製することにも成功した.作製された金属合金の引張り,圧縮,曲げ,疲労などの強度試験を行ない,それらの性質はポアの方向に強く依存することを初めて明らかにした.また,有限要素法を用いて強度特性のシミュレーションも行った.さらに、内部摩擦,弾性定数,熱膨張係数,熱伝導度,電気伝導度,ヤング率を測定しデータベースを充実させた. これらの材料を用いて,フィルター,静圧軸受けの試作品を作製し,性能試験を行なった結果,ポーラス金属を用いることの有用性が確認できた.熱交換器の基礎実験を行ない,従来製品よりはるかに優れた性能を有することを実証し,製品化の実現性が高くなった.ポーラスインプラントを動物に埋入し,動物実験を行なった結果,ポア内に骨細胞および繊維芽細胞の侵入が認められた.つまり,ポーラスチタン,ステンレス鋼が人工歯根,人工骨に使用できる見通しを付けることができた.さらに,平成14年4月ロータス形状ポーラス銅を用いたゴルフパター製品が株式会社リョービから発売されることになった.以上のように,最終年度で,当初の応用開発の目的を達成でき,一部は当初の目標になかった製品化をも実現した.
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