研究課題
特別研究促進費
研究背景および目的:わが国の高度先端医療の中核的機関である大学および大学附属病院は、先端生命科学技術等の急速な発展に対応して、より迅速に実験的臨床研究成果を臨床の場に還元し、国民の医療の高度化および発展に貢献することが強く求められている。本研究班の目的は、わが国の高度先端医療の体系的な研究開発の在り方を調査研究することにある。調査経過:わが国におけるこれまでの先端的医療開発の問題点を探り、臨床と基礎的研究を橋渡しする開発研究段階の実験的医療研究(トランスレーショナルリサーチ)に焦点を絞り、定義、わが国の実熊、および今後の在り方について討議を重ねた。これに伴い、トランスレーショナルリサーチおよびIRB(施設内審査委員会)について全国42国立大学医学部にアンケート調査を実施した。また海外との比較検討のためには、米国Bringham & Womens' Hospital、John Hopkins大学、NIH、FDA、米国Geron社、米国GE中央研究所等を視察した。さらに今後世界をリードすべき分野としての、再生医学、EBM、耐性感染症の対処法、メディア活用型医療、遺伝子治療、医療工学、さらに安全管理審査体制の各テーマに沿ったワーキンググループを結成し、現在の問題点および今後の対策について検討した。現状の問題点:わが国の問題点として1)研究者の意識、2)大学附属病院での研究体制、3)臨床系、基礎系、理工系研究者間の不完全な情報ネットワーク4)医学研究活動に対する社会の理解不足、5)研究体制における人的流動性の欠如、6)公的資金配分の非効率性、7)臨床試験実施上の基盤整備の不足、8)研究推進・振興機能と安全管理審査機能との不分離システム、9)人体実験規制関連法の不在などが指摘された。具体的促進策:高度先端医療開発の推進策として、1)大学附属病院高度先端医療開発拠点の整備、2)実験的医療開発推進助成制度の充実、3)安全性・科学的審査体制の整備、4)基礎系研究者と臨床系研究者のブリッジの構築、5)バイオロジーやロボット工学などの他分野の研究者と医学系研究者の共同研究の推進、6)産官学連携体制の構築などが挙げられた。このような役割を効果的に果たす場として、高度先端医療開発センターを全国に拠点整備し、わが国から世界に発信できる最先端医療技術開発の重点的推進を図ることを提案した。同センターでは、流動的な幅広い人材の確保と、機動性を持った組織とするために、研究者は任期制とし、他大学や他分野、企業の研究者など多様な人材の構成によるオープンセンターとする。また、臨床試験の安全性や審査体制の充実のために、各医学部倫理委員会の再定義、ガイドラインの策定および生命倫理諮問委員会の設置などを行うものとする。