研究概要 |
粒状で外力により下地と乖離して大きく変位する材料で表層が構成されているルーズサーフェイスのすべり,かたさ,足元の安全性および歩きやすさに関する心理学的尺度を官能検査手法を用いて構成した。これらの心理学的尺度について,既往の研究で表層が下地に固定されているフィクストサーフェイスを対象に筆者らが開発したすべり,かたさ,足元の安定性の測定装置による物理量との対応を検討した結果,既往の測定装置によって得られた物理量と各心理学的尺度は対応しないこと,すなわちルーズサーフェイスの歩きやすさの評価を行うためには新たな測定装置による新たな物理量を設定する必要があることが明らかとなった。そこで前年度に設計,試作したルーズサーフェイスの挙動測定装置を用いて心理学的尺度と対応する物理量の設定を行い,種々検討の結果,2種の異なる測定条件下で得られる物理量L40,L70を単独あるいは組み合せることによって,各心理学的尺度との対応を得ることができた。すなわち,ルーズサーフェイスの挙動測定装置を用いて,ルーズサーフェイスのすべり,かたさ,足元の安定性および歩きやすさを評価できることを示した。 また,ルーズサーフェイスが歩行者に与える心理,生理的効果について検討を行った。代表的な5種のルーズサーフェイスと1種のフィクストサーフェイスを用いて,歩きやすさ,疲労しやすさ,体力維持効果に関する心理学的尺度を官能検査手法を用いて構成し,各尺度間の相関が高いことを示した。さらに,ルーズサーフェイスを歩行中のバイオメカニクス的・生理学的パラメータとして床反力,筋電図,心拍数を記録し,心理学的尺度との対応を検討した結果,歩きづらいルーズサーフェイスと歩きやすいサーフェイスでは,各パラメータに差がみられた。以上より,ルーズサーフェイスは歩きづらく,疲労しやすいと評価される一方,体力維持効果を期待できることを示した。
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