研究概要 |
ネットワークのブロード・バンド化ならびに画像圧縮技術の進歩に伴い,今後,聴覚障害児・者によるテレビ電話やテレビ会議システムを用いた遠隔地同士の画像通信ならびに協同作業が可能になってくるものと思われる.聴覚障害者は日常,手話や口形の読み取りなどで主にコミュニケーションを行っているために,画像通信などでは,健常者の場合と違った問題が生じるものと予想される.そのため,より効果的なシステムの構築ならびに利用方法の検討を目的として,NTSC信号による画像劣化の無い画像通信ならびに遠隔地協同作業実験を,聴覚障害学生を対象に実施して,聴覚障害者特有の問題などの検討を行った.今回の実験結果より,以下の内容がわかった. 1 テレビ並みの画像が確保されるような状況では,聴覚障害者は特にストレスを感じることも無く,十分にコミュニケーションが可能である. 2 遠隔地からの手話通訳や協同作業時には,通訳者と聴覚障害者ならびに聴覚障害者同士の視線が外れた場合に,相手へのコンタクトが難しく,コミュニケーションが非常にとりにくい. 3 相手との視線が外れるような状況では,相手へ注意を喚起しコンタクトを取るために,連絡用のライトなどの利用が非常に有効である. 4 遠隔地同士の協同作業の場合では,カメラやモニタの配置などの「作業のやりやすさ」と,連絡用ライトの利用などによる「連絡のとりやすさ」の問題が複雑に絡み合っており,どちらかを優先されるというような単純なものではない.
|