研究概要 |
1998年までに記載されたオビキンバエ亜科のタクサは2族14属87種であることが確認され,約3000頭に及ぶキンバエ類の標本を検査した.国内外の研究機関所蔵の標本検査から各国のオビキンバエを含むクロバエ相の解明と記載分類学の再検討が出来た.同時に各種(タクサ)の比較形態学的分析と系統解析に必要な形質状態のデータが得られた.比較的多くのデータの得られたChrysomyaオビキンバエ属のオビキンバエ種群8種の成虫の比較形態学から系統解析を試みた.16個の特徴を拾い出し,それぞれの特徴の祖先形質状態(基本形質)と子孫形質状態(派生形質)を決定し,類似性分析(SCD)と系統分析(SRR)の手法を用いて解析した.その結果,熱帯アジアを分布の中心とし,東アジア,オーストラリア,オセアニアに広く分布するこの種群は3つのクラスターに分岐し,第1の枝はムカシオビキンバエChrysomya phaonis Seguyよりなる祖先群であり,これからスンダオビキンバエ・サブグループとオビキンバエ・サブグループの2つが派生したことが判明した.ムカシオビキンバエは多くの祖先形質を保有し,ヒマラヤ山地帯をベルト状にパキスタンから中国にかけて分布していることがわかった.これから南下した,スンダランドでスンダオビキンバエが,ウオレス線を越えたパプアランドでオビキンバエ・サブグループが進化したことが、系統解析と種の地理的分布から判明した.
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