研究概要 |
最近、通信、情報時代の到来と共にギガヘルツ帯域の電磁波が、飛躍的に衛星通信、移動電話等様々な通信機器に利用され始め、利用周波数帯が急速にGHz帯域まで拡張しつつある。しかし、同時にこれら電磁波の利用によって電磁環境・障害問題(Electo-Magnetic Interference)(EMI)も惹起されている。この為に本研究のマグネトプランバイト型(M型)フェライトがこのEMI問題の解決の為に、不要妨害電波を除去抑制する吸収体として期待されている。我々の最近の研究では、M型BaフェライトがGHz帯のマイクロ波に対処する有望な材料であることが分かっている。電波吸収体の吸収特性はその磁気共鳴現象を利用するもので、複素透磁率μ=μ′-jμ″,複素誘電率ε=ε′-ε″、特に複素透磁率の虚部μ″=Ms/2Haα(Ms:飽和磁化、Ha:異方性磁界、α:減衰定数)に依存する。このμ″値が高い程優れた特性を示す、既にM型六方晶BaフェライトBaFe12x(Me0.5Mn0.5)xO19(x=0-4)(Me:Ti,Mn)において、主成分のFe^<3+>イオンを(TiMn)で置換して、高いμ″値が得られている。また六方晶フェライトは一軸異方性を有するので、フェライト試料を磁場中プレスで容易磁化軸方位に配向させると電磁波吸収特性が向上することも予想される。本研究ではさらにBaFe12-x(Me0.5Mn0.5)xO19(Me:Ti,Zr,Sn)のFe^<3+>イオンの置換元素としIV族のZr,Snを採用した。それ故、c-軸方向に配向させ通常の粉末冶金法で合成し磁界中で配向させたC-軸配向試料をトロイダル状に加工し、振動型磁力計とネットワークアナライザーにより電磁気測定が行われた。その結果、Ti,Zr,Sn置換の配向試料は、それぞれμ″=4.4、5.1、5.7、マッチング厚さの高い値とマッチング厚さdm=0.9、0.6、0.4mmの小さい値が得られ、(TiMn)置換等方性試料の3.8に比べ、μ″の値は50%高く、dmでは30%も小さい値が得られた。それ故、Ti,Sn,Zr,Mn,のような金属イオンによる置換や六方晶フェライトにおけるc軸配向はM型フェライト吸収体の電磁波吸収特性の向上に効果的であると結論される。
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