研究概要 |
無線通信システムは,通信を目的として意図的に電磁波を開空間に放射するものであるが,無線通信システム以外にも,電子レンジなどの高周波デバイスを用いたISM機器(高周波利用設備)等からも少なからず電磁波が開空間に放射されることが知られており,これらの電磁波(人工雑音)の影響により無線通信システムの伝送特性は大きく劣化するものと考えられる.本研究では,普及率の高いISM機器である電子レンジから発生する人工雑音環境下での2.4GHz帯無線LANシステムの伝送特性に関する検討を行った.まず,人工雑音の発生状況やマルチパスフエージングの影響によって時間的に変動する伝搬路状況に対して,適応的に伝送速度を決定する適応マルチコード伝送方式を提案し,それによる伝送特性の改善効果を評価した.その結果,人工雑音発生時やマルチパスフェージングによる受信信号電力の低減時などの伝搬路状況劣悪時には低速ながらも従来の無線LANシステムよりも良好な伝送特性が得られること,ならびに,人工雑音非発生時や受信信号電力が確保できる場合においては,従来よりも高速な伝送速度を達成できることを明らかにした.次いで,2.4GHz帯無線LANシステムを利用したマルチメディア伝送の実現を目的として,要求されるトラヒックや伝送速度に対して適切なチャネル割当を行うシステムを提案した.その結果,2.4GHz帯無線LANシステムが利用できる複数チャネルを所要トラヒックや伝送速度に応じて適応的に利用することにより,大容量かつ即時性に優れた伝送システムが構築できることを明らかにした.
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