研究概要 |
本研究の目的は,脳外傷患者の認知・コミュニケーション障害について,障害特徴,発現機序,社会的予後との関係を検討し,その研究成果に基づき,認知・コミュニケーション障害に関する評価法を開発することにある.研究は3ヵ年かけて実施し,最初の2年間は認知・コミュニケーション機能の障害像を検索し,最後の1年間に研究成果をまとめ,3種類の評価法を作成した. 1.脳外傷患者の認知・コミュニケーション障害に関する研究 び漫性脳損傷患者,局所脳損傷患者,健常成人に談話機能課題,各種認知機能検査,社会的予後評価を経時的に実施し,下記の結果を得た. (1)脳外傷患者のコミュニケーション機能の障害は,談話機能に特徴的に現れる.談話機能障害はび漫性脳損傷患者と局所脳損傷患者のいずれにも現れ,その障害には注意機能,記憶機能,遂行機能などの認知機能障害が関係した. (2)脳外傷患者の談話機能障害は患者の社会的予後に影響を及ぼした. (3)び漫性脳損傷患者には認知機能障害を有する者が高率に存在し,その中核は記憶障害であった.記憶障害に加えて遂行機能障害を呈する者は外傷後健忘期間が長く,社会的予後も不良であった. 2.上記の研究成果に基づき,「脳外傷談話機能検査(試案)」,「脳外傷認知・コミュニケーションスクリーニングシート(試案)」,「脳外傷認知・コミュニケーション評価票(試案)」を作成した. 今後は,開発した評価法の信頼性,妥当性を検証し,その完成化を図る予定である.
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