研究概要 |
本研究は実験的に錐体路を破壊した脳卒中モデル動物を作成し,回復過程の脳内および筋を詳細に検索し,回復に重要な働きを担う神経細胞群を見いだし,その細胞群がどのような物質を作りだし積極的に働いているかを経時的に検索し,破壊された細胞を補い代償性に働き出す神経細胞群等を見いだすことを目的としている。動物群;マウスを用い.実験的に大脳脚部を片側電気破壊し、破壊数日後から2ヶ月後の動物の安静時と,トレッドミル走行負荷後の脳内と筋の活性物買の変化を,凍結切片を作製し免疫組織化学的に検索した。神経細胞の動態;脳内のc-fos蛋白の動態は安静時には少ないが,運動させると健常側では豊富な出現が認められた。また損傷側では,破壊後4日後から7日までc-fos蛋白がほとんど出現が認められず,神経細胞の活動が大幅に押さえられていることがわかった。一方GFAP免疫陽性構造は,術後早期より損傷側の脳の広い領域で出現し,この反応性アストロサイトが認められる領域で逆にc-fos陽性構造がほとんど認められなかった。このときCaM Kinase IIは術側のアストロサイトに大幅に増加していた。このことは錐体路を障害された4日から7日までの脳内では,アストロサイトがCaM Kinase IIを大量に生産し活性化し,恐らく近隣の神経細胞に働き,核内のc-fosより下流の遺伝子の働きを押さえるように働く可能性が示唆された。反応性アストロサイトはNGF,FGF,TGF等の神経栄養因子を放出し,修復や神経再生等に働いているだけでなく,成長抑制因子等を放出しc-fosの発現を抑制することで,恐らく損傷早期に神経細胞の働きを積極的に抑制していることも考えられた。筋の動態;筋ではc-fos蛋白が患側ではなく健常側の筋細胞核に術後早期に出現し代償性に働いて肥大に関与していることが示唆された。
|