研究課題は脊髄損傷者の下肢他動運動を評価するものであるが、本年度は健常者を対象とし実験を行った。下肢他動運動エルゴメーターに足を装着させ、毎分20、40および60分回転の他動運動をそれぞれ6分間行わせ、その時の、酸素摂取量、換気量、呼吸商、呼吸数、大腿部および下腿部の筋内酸素動態(酸素化ヘモグロビン、脱酸素化ヘモグロビン、総ヘモグロビン)および心電図を測定した。また、心電図のRP間隔のパワースペクトル解析を実施した。その結果、回転数が上昇するほど、酸素摂取量、換気量、呼吸商、呼吸数および大腿部の酸素化ヘモグロビンの上昇、および大腿部の脱酸素化ヘモグロビンの減少が認められた。しかしながら、下腿部の筋内酸素動態の変化は大腿部より著しい変化を示すが、一定した変化は得られていない。また、心拍数RP間隔のパワーについても個人内では明らかな変化が認められるが、共通する変化は現在のところ断定できない。以上のように、健常者の場合、随意的な筋収縮でなくても、他動的に筋を伸縮させることによって血液循環やエネルギー代謝が促進されることが示された。 尚、本研究課題は海外学術雑誌に投稿する予定であるが、そのためには研究倫理委員会等の承認が必要条件となる。研究代表者が所属する大学でまもなく研究倫理委員会が運営される。本研究課題も、運営後すぐに申請し、承認を得た後、脊髄損傷者を対象とした研究を実施する予定である(実験体制はすでに整っている)。
|