研究概要 |
1.炎症マーカーとしてのSAA測定法の開発 動物のSAAは血清からの精製が困難なため研究が非常に遅れていた。そこでリコンビナント猫(rf)SAAの作成を試みこれに成功した(論文5)。次いで、マウス抗猫SAAモノクロナール抗体の作成を試みこれにも成功した(論文1)。そこでこのモノクロナール抗体を用いたELISAによる猫SAAの測定系を開発し臨床的応用性を検討した。その結果、猫SAAの炎症マーカーとしての有用性が確認され(未発表)、将来炎症性疾患の病態解明に大きく寄与するものと期待された。 2.犬および猫の炎症性疾患に係わるT細胞接着分子およびサイトカインの利用 犬や猫の自己免疫疾患に係わるT細胞接着分子(CTLA-4,CD28)(論文2,3,6)、およびアレルギーに係わる犬のサイトカイン(IL-4)のクローニングおよび蛋白の発現に成功した(論文7)。現在これらの物質の研究および臨床面での利用性を検討中である。 3.小動物疾患における血管炎マーカーとしての抗好中球細胞質抗体(ANCA)測定系の確立 先ず犬や猫の疾患時にANCAが検出されるか否かについて、間接蛍光抗体法およびヒト好中球細胞質精製抗原を用いたELISAにより調査した結果、種々の疾患でANCAが検出された(口頭発表1,2)。そこで現在2で述べた各種サイトカインを用いたANCA測定系の開発を検討中である。 4.炎症性サイトカイン、急性期蛋白およびANCAの相互作用に関する解析 これらの問題については現在ほとんどわかっていない。そこで我々は犬、猫の各種急性期蛋白(C-反応性蛋白:CRP,SAA,その他)の疾患時における動向を調べその臨床的意義を検討した(論文4,8、未発表)。将来、1,2,3で述べた各手法の完成により、これらの相互作用の解明が飛躍的に進展するものと期待される。
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