研究概要 |
1.感染幼虫の注入による定量感染猫を作出し、免疫学的診断法の有用性を検討した結果、抗体陽転は感染30日後、血清中の抗原陽転は160日後で、発作発生の危険性が高くなる感染180日以前に診断できる可能性が示唆された。 2.感染幼虫の定量感染後に駆虫を行ない、感染曝露に伴う抗体価の推移を4頭の猫で観察した結果、抗体陽転は初回感染から42〜56日後で、一方、抗体陰転は989日後でも認められなかった。しかし、感染160日後と感染600日後に抗体価の大きな減少があり、その時の抗体価を考慮にすれば、最近の感染と過去の曝露を免疫学的に判別できる可能性が示唆された。 3.疫学様相の把握のため、平成11年度は140頭、平成12年度は80頭の来院猫について免疫学的検討を行なった結果、抗原や抗体陽性の猫が検出され、自然感染例の検出と臨床的には無症状期の免疫診断が可能となった。陽性猫は臨床的には無症状であったが、肺動脈の蛇行がレントゲン検査で観察された。 4.臨床獣医師との情報交換および協力依頼を行ない、提供された自然感染材料を2例剖検し、肺栓塞症、肺動脈内膜の肥厚、好酸球の浸潤、肥満細胞の脱顆粒等の病理・電顕所見を得て報告した(動物臨床医学,9(4):印刷中;第129回日本獣医学会)。 5.未成熟虫の移植による定量感染猫の作出し、入手困難なミクロフィラリア血症猫の作出に成功し報告した(Veterinary Parasitology,92(3):227-232.)。 6.市販キット(Snap,ASSURE/FW)と自作のモノクローナル抗体を用いたサンドイッチELISA系による抗原検出法の有用性を比較した結果、各法に特徴があり、血中抗原が一様でないことが明瞭になった。 7,自作のモノクローナル抗体を用い、Rapid immunomigration method(RIM)の開発を行ない、循環検出の検出が可能であった。
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