研究概要 |
1)ラット心筋におけるアルドステロン産生、及び合成酵素の存在の証明 ラット心臓潅流標本を用いて潅流液中にアルドステロンの存在を高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、ガスクロマトグラフー質量分析型(GC/MS)を用いて検討を行い,アルドステロンと同等の質量を有するステロイドの存在を確認した.次に心臓をホモジナイズし、[^<14>C]-DOCを加え培養し、培養液をHPLCを用いて分離しアルドステロンの標準ピークに一致する分画を採取し放射活性を測定し、アルドステロンまで変換されるか検討を行なった.心筋におけるアルドステロン合成酵素メッセンジャーRNA(mRNA)の存在を証明するために,心筋からRNAを抽出し逆転写酵素で処置後、アルドステロン合成酵素遺伝子に特異的なプライマーを用いてPCRを行いmRNAの発現を検討した.心筋におけるアルドステロン合成酵素遺伝子mRNAの発現は副腎に比べて100分の1程度と弱かったが,検出可能であった. 2)ラット心筋におけるアルドステロン合成調節機構の解明 ラットにアンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシンIIを投与し、また副腎全摘ラットを作製し心臓からのアルドステロンの産生、及び心筋におけるアルドステロン合成酵素活性及びmRNAの発現に対する影響を検討した。心筋におけるアルドステロン合成は副腎同様アンジオテンシンII及びKにより調節をうけ,ACTHの影響は見られなかった. 3)脳卒中易発症自然発症高血圧ラット(SHRSP)における検討 心筋から産生されたアルドステロンがSHRSPの心肥大進展に及ぼす影響について検討した.心肥大との関連について検討すると,心筋からのアルドステロン産生,合成酵素活性,mRNAの発現は心肥大の進展とともに増加し,心肥大の病態に関与していることが示唆された.次に副腎からのアルドステロンの影響を除外するために,SHRSPの両側副腎摘出を行い,アルドステロン受容体拮抗薬であるスピロノラクトンを投与し心肥大の変化について検討した.両側副腎摘出SHRSPにおいても心肥大の進展がみられたが,スピロノラクトン投与により心肥大の進展は予防できた.これらのことより心筋から産生されるアルドステロンは心肥大の病因に一部関与していることがさらに示唆された.
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