研究概要 |
我々は,労作性狭心症で発症し,多彩な動脈硬化性狭窄病変(冠動脈,内頚動脈,腎動脈,腹部大動脈)を有し,家系員にも脳梗塞を発症した先天性HC II欠損症の1家系を見出した。遺伝子解析の結果,Pro^<443>(CCG)からLeu^<443>(CTG)へのミスセンス変異を同定し,さらにCOS-1細胞を用いた発現解析で変異HC II蛋白は細胞外への分泌障害を示すことも明らかにした(Thromb.Haemost.,in press)。また、本患者の動脈閉塞切除血管組織の免疫組織化学解析でデルマタン硫酸の染色性の増加とそれに一致した部位でのHC IIの染色性の明らかな低下を認めた。一方、甲状腺機能低下症の患者では血中HC II濃度が著明に低下することを見出し、これが甲状腺機能低下症の患者での動脈硬化症発症の一つの機序である可能性も明らかにした。さらに、PTCA/ステント後再狭窄率と血中HC II濃度との解析で血中HC II濃度が150%以上であれば再狭窄がほぼ0%である結果も得た。これらの主に臨床的解析より得られた成績を基に、さらに基礎的解析を行った。その結果、デルマタン硫酸を含んだ培養血管平滑筋細胞由来マトリックスへのHC IIの結合性がLDLの存在により著明に抑制される事を明らかにした。また、甲状腺ホルモンは培養肝細胞でのHC II産生を転写レベルで制御していることも明らかにした。HC IIノックアウトマウスに関しては現在、ターゲティングベクターを完成させ相同組み替え体のスクリーニングを進めている。
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