研究概要 |
ポリスチレンから純水中に100度、24時間で溶出する成分のうち、サル脳ミトコンドリア膜中のMAOA(モノアミンオキダーゼA)の基質セロトニンに対する酵素活性を阻害する画分として、逆相カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー法で、溶媒のアセトニトリル濃度が約30%付近で溶出する画分を大量に調製し、以下の解析に用いた。 このMAOA阻害画分は、FTIRおよびラマン分光法を用いた構造解析により、ベンゼン環を持つ単純な低分子化合物であることをすでに昨年報告した。本年度はさらにC^<13>-およびH^1-NMRにより、ベンゼン環に炭素分子1個がついたもので、FTIRによる詳細な再検討においても、置換基は1個であることがわかった。さらに質量分析計(TOF/MS、GC/MS、LC/MS)により、精確な質量数を求めているが、現在のところ、ベンゼン環の数は一つではなく、ダイマーもしくはトリマーの可能性が示唆されている。 さらにこれらの結果をふまえ、可能性のある市販のスチレン類(benzoyl peroxide,sodium benzoate,benzoic acid,phthalic acid,benzoin and benzoic anhydride)を用いてこれらが直接、MAOAを阻害するかどうか検討したが、ポリスチレン抽出画分がMAOA活性を阻害する1μg/mlの濃度ではいずれも阻害しなかった。 また、ポリスチレン抽出画分は、上記濃度で、サル脳ミトコンドリア膜中のMAOAの活性を70%阻害したが、MAOAのアイソザイムであるMAOB、および、ラットミトコンドリア膜を用いた場合、MAOA,MAOBともに阻害しなかった。さらに、ポリスチレン抽出画分によるサルおよびラットのアセチルコリンエステラーゼに対する阻害効果を検討したが、いずれも阻害しなかった。
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