研究概要 |
内分泌かく乱物質等,生活環境中の化学物質による健康影響および安全性の確保等に関して,プラスチック製手袋・食品包装用ラップフィルム抽出物およびノニルフェノール分画物に関連する化合物及び医薬品・プラスチク等工業的生産による化成品・天然物成分などの合計37種類の化合物を検体として,in vitro(組み換え酵母系及び乳癌細胞系)及びin vivo(ラット膣スメアテスト)でエストロゲン様活性を定量的に測定した。二つのin vitro測定系より得られた結果は,少数の例外を除いて,よい相関を示した。一般に,合成化合物は酵母系測定で,また天然物エストロゲンは細胞系で高めの活性値を示した。In vivo測定系では,18種類の化合物のエストロゲン様活性を測定した。これらのうち8種類の化合物については,本測定結果を1930年代に測定したDoddsらが報告した結果との間で,よい相関を示した。この相関関係から,医薬品,プラスチック等の化成品及び天然物成分化合物の現状の影響評価と今後の課題について考察した。その結果,日常生活で使用されているプラスチック等の化成品や天然物成分には様々な程度のエストロゲン様活性を有する化合物があり,個々の活性は極めて弱いといえるがその総数を考慮すると,さらに検討を重ねる必要のあることが示された。また,本実験結果に基づいて,プラスチック等市販化成品のエストロゲン様作用による危険性の回避の方法を考察したところ,可塑剤フタル酸エステル類の種類や界面活性剤ノニルフェノール混合物の画分には活性強度の差異があり,それらを選択することによって危険性を軽減できる可能性が示された。最後に,現行の食品衛生法によるプラスチック添加化合物の規制方法を考察した。その結果,安全性の確保のために改善する方策の一つとして,食品用プラスチック添加剤を基本的に非意図的な食品添加物として取り扱うことが必要であることを示した。
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