研究概要 |
凸面鏡と平面鏡の中に映し出された対象の大きさと距離の知覚について,現在,野外において実験を行っている.いずれの鏡も直径は約20cm,凸面鏡の曲率半径は220Rである.被験者は十五名の大学生.各被験者は,この鏡の一方を手にもち,背後に置かれた対象を鏡に映しながら,その対象の大きさ(高さ)と距離を言語的に推定するように求められる.刺激対象は5つの二等辺三角形であり,その高さは,32cmから162cmであり,各対象を2.5mから45mの5つの距離にランダムに提示した.実験は,2名の大学生を雇って現在データを集めている段階である.得られた結果は,2000年度の夏の日本視覚学会において発表する予定である. 上記の実験をはじめる前に,鏡のなかに映し出された対象の距離の知覚について,すでに,予備的にいくつかの実験を行ったが,その結果によれば,凸面鏡のなかの対象の見かけ距離は,平面鏡のなかの見かけ距離よりも,約1.3倍程度遠くに見えることが明らかにされた.その結果をまとめて,一昨年,日本心理学会のJapanese Psychological Research誌に投稿し,掲載の許可を得,現在,出版を待つのみとなっている.さらに,1999年度の国際精神物理学会では,このデーターを別の角度から再分析し,鏡の中の距離の知覚が,対象の視角によって大きく影響されることを明らかにしている.
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