研究概要 |
テレワークとは、情報通信機器を利用した一種の在宅勤務を意味する。現時点におけるわが国のテレワーカーは、主に正社員として企業に雇用された労働者が出勤の頻度を減らし、自宅やサテライトオフィスで勤務する「在宅雇用型」と名付けられた類型と、企業と請負関係等を結び自宅で就労する「在宅就業型」とよばれる類型に大別される。SOHO(Small 0ffice, Home Office)のような零細自営業従事者も、一般的に後者に含められる。 本研究においては、実証社会学的手法によって「在宅就業型」テレワーカーの労働や生活の実態とテレワークに関する意識をさぐる目的で、2種の社会調査を行った。そのひとつは、在宅就業型テレワークを仲介・斡旋する企業に登録しているテレワーカー290名を対象としたアンケート調査である。わが国における初期の在宅就業型テレワークの典型的なかたちは、家事・育児のために勤めに出ることができない女性たちが、データ入力等の単純作業を安い単価で請け負うというものであった。今回の調査では、回答者の3割程度が男性で、業務の内容もインターネット関連を中心にかなり広がりをみせている。しかし、在宅就業型テレワーカーの主力が学齢期までの子を持つ女性で、労働の中心が低賃金の単純作業である点は、本質的に変化していないことが判明した。 もうひとつはSOHOを経営する18名の起業家に対する比較的長時間のインタビュー調査である。その結果、ほぼ全員が自宅から都心にかまえたオフィスに通勤を行っており、この意味ではSOHO経営者たちをテレワーカーに含めることができないという意外な結果を得ることになった。また、大半のケースでは起業後の労働時間の増加とあいまって、SOHO開業による「時間的ゆとりのある生活」とは正反対の事態が生じている。他面で、全員が起業によって人生の自己決定権を得たと考えており、起業そのものは肯定的に評価している。
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