研究概要 |
平成12年度においては、平成11年度の調査結果からポーランドでは市場経済化がほぼ完成していることが判明したことをうけ,市場経済化がまだ不十分な段階でのポーランド人の消費・資産形成を調査することを主眼とした。それゆえ,調査地域をポーランド国境から8キロほどベラルーシに入ったポーランド人居住地域でも調査を行うことにした。ポーランドでももちろん調査を行ったが,大企業サラリーマン4戸に限定し,一方ベラルーシ地域では10戸の調査を行った。基幹的消費の意思決定については,両者とも大きな差異はなく,家族構成や親からの財産贈与および子供の数と本人のライフ・ステージに大きく作用され,所得や景気動向にあまり左右されない,極めて保守的な行動が観察された。しかし追加的でかつ新規の消費対象については,所得の増加と社会心理的風潮にポーランド国内のポーランド人が強く影響を受けていることも判明した。貯蓄については,住宅建設・家具購入など現物貯蓄が主体であることが,両国ともに明確となった。預貯金貯蓄は現物貯蓄のための経過的形態にすぎないことも判明した。老後の備えという考えはポーランド・ベラルーシ両国ともにまことに希薄であった。上記項目の実施のため研究代表者はポーランドとべラルーシを訪問した。 日本においては,少数の家庭訪問調査を補充的に行ったが、主に平成11年度と12年度から得られた結果をどのように発展させるべきかについて、各方面の専門家と意見交換を行った。数十の家族調査を定量的に意味づけるために、数百のサンプルを調査するマイクロサーベイ・パネルサーベイに発展させるべきであるとの結論が得られた。ロシア・東欧学会などでの学会発表によりこの手法に大きな関心が寄せられた。また家計調査の際に家計図を作成することは非常に有効な補助手段であることが判明した。
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