研究概要 |
本年は京都大学数理解析研究所でプロジェクト「21世紀の低次元トポロジー」が行われ,組織委員の一人として参加した。テーマの一つとして量子不変量があげられており,内外の多数の研究者が集まって活発に交流が行われ,本研究にも多大の貢献があった。本年の成果をまとめると次のようになる。 1.代数的側面について プロジェクト「21世紀の低次元トポロジー」に参加したD.Thurstonは,ウェブ図のなす代数系に対して「微分」(derivation)を導入し,自明な結び目に対応する元についての非常に基本的な表記法を得た。また,これに附随してこの代数の二種類の積構造から定義される二種類の環構造についての同型対応を構成した。これについて京都大学数理解析研究所での短期共同研究「多重ゼータ値の諸相」で紹介し,その際に,多重ゼータ値の研究でのシャッフル積と調和積の間の関係と対応することが明かとなった。これを受け,多重ゼータ値の理論との関係について研究を開始した。 また,「21世紀の低次元トポロジー」の参加者とウェブ図のなす代数系の呼称について話し合い,今後はヤコビ(Jacobi)図と呼ぶことで合意した。 2.幾何的側面について ウェブ図と深く関係する量子不変量に対し,「体積予想」と呼ばれる問題がある。これは双曲構造が入る3次元多様体に対し,その体積が量子不変量からある方法で決まるのではないかという予想である。量子不変量には様々な側面があるが,量子6j-記号と呼ばれるものに注目し,体積予想から推察して双曲四面体の体積が量子6j-記号から得られると考え,研究を進めた結果,双曲四面体の体積を表す新たな公式を得た。
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