研究概要 |
今年度の研究の結果,次の点が明らかとなった. ・曲率が下に有界な3次元コンパクト・アレクサンドロフ空間において極小曲面を構成するためには,そのような空間にリプシッツ構造を構成する必要があった.これに関して,一点からの距離関数の一般化された意味の積分曲線のリプシッツ性が得られた.とくに,2次元の場合には距離球にリプシッツ構造が入るので,アレクサンドロフ曲面にはリプシッツ構造が入ることが分かった.3次元において問題となるのは,距離球にリプシッツ構造を構成する点である.これは2次元の場合の結果を拡張することで実現出来そうである.従って,これまでの研究の結果により,3次元アレクサンドロフ空間にリプシッツ構造を構成する問題は,かなり現実的に解決可能な問題となってきた. ・上記問題と少し関連して,絶対全曲率が押さえられた曲面が,測度つきグロモフハウスドルフ収束に関する収束,崩壊の具体的な記述が可能となった(堀敦彦氏との共同研究).来年度中に論文を完成させる予定である. ・最大の頂点数をもつコンパクト非負曲率アレクサンドロフ空間の等長類の分類については,数学的には出来ているのだが,本年度は論文を完成する時間的余裕がなかった.来年度中に完成させる予定である.
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