研究概要 |
1.N21,N22-架橋ポルフィリン有機金属錯体の合成法の確立: テトラフェニルポルフィリンのN21,N22-架橋誘導体とメチル(クロロ)パラジウム(II)シクロオクタジエン錯体との反応により、定量的にメチルパラジウム(II)ポルフィリン錯体を得た。また、(クロロ)ロジウム(I)シクロオクタジエン錯体との反応により、(シクロオクタジエン)ロジウム(I)ポルフィリンを高収率で得た。また、オクタエチルポルフィリンについては、N21,N22-架橋誘導体のジクロロパラジウム(II)錯体とテトラメチルスズの反応によりメチルパラジウム(II)ポルフィリン錯体が高収率で得られた。 2.可視光照射による金属-炭素結合の反応促進: ジクロロパラジウム(II)ポルフィリン錯体とアリルスズとの反応は可視光照射により著しく促進され、(πーアリル)パラジウム錯体を与えることを見いだした。Me-Pd結合に対するイソニトリルの転位挿入反応もポルフィリン配位子に対する可視光照射により促進されることを実験的に明らかにした。これらは配位子の光化学を有機金属化学反応に反映させるという画期的な現象である。そのメカニズムについて明らかにし、一層の展開を図りたい。 3.Pd-C結合に対するアルケン、アルキンの転位挿入反応: 最近になって、窒素ベース系2座配位子を持つパラジウム錯体が種々の重合反応に利用できることをBrookhartは明らかにしているが、この重合の単位反応であるアルケン、アルキンの転位挿入反応を研究する上でポルフィリン配位子が極めて有用であることを見いだした。今後は、この反応の立体化学および速度を制御する因子を明らかにしてゆく。
|