研究概要 |
対称性の比較的高いテトラフェニレン(tphe)を配位子に、金属イオンにAg(ClO_4)用いて、p-xylene中で、Ag(I)錯体[Ag(tphe)(ClO_4)(p-xylene)](1)の合成に成功した。Agには、tpheの2つのフェニル基にη^1とη^2様式で配位し、さらにClO_4^-のO原子とp-xyleneがη^2様式で配位した4配位4面体構造を有する単核錯体である。この錯体の特徴は、tpheの4つのフェニル基のうち2つのみがAgに配位し、残りの2つのフェニル基が配位していないことである。o-及びm-xyleneがAgに配位した例は報告されているが、p-xylene配位は報告されいなかったので、この錯体はp-xylene配位した最初の例である。 錯体1では溶媒に使用したp-xyleneがAgに配位するため、単核錯体を生成したので、Ag(I)に配位する可能性の少ない1,3,5-trimethylbenzeneを用いることで、Ag(I)錯体ポリマー[Ag_2(tphe)(ClO_4)_2]_n(2)の合成に成功した。Agはいずれも2つのフェニル基がη^1とη^2様式で配位している。さらに2分子のClO_4^-のO原子が配位した4配位4面体構造をとっている。錯体全体としては、AgとClO_4^-で形成されたジグザグ1次元鎖が、tpheで架橋されることにより2次元シート構造を形成している。この錯体の特徴は、tpheの4つのフェニル基が2個のAgと結合していることである。次にAg(ClO_4)変わりにAg(CF_3SO_3)用いても二次元Ag(I)錯体ポリマー[Ag_4(tphe)(CF_3SO_3)_4]_n(3)の合成にも成功した。 このように溶媒や対アニオンで錯体ポリマーの構造が制御できることを明らかにした。
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