研究概要 |
MEKCによる中性試料のオンライン濃縮法として新しく開発されたスウィーピング法についてその特性を詳細に検討した。スタッキング法とスウィーピング法とを組み合わせると非常に高い濃縮が可能なことを示した。陽イオン試料を電場増強電気的試料注入法により大過剰に注入してから,擬似固定相に硫酸ドデシルナトリウムミセルを用いるMEKCにより,大過剰に濃縮注入された試料ゾーンをスウィーピング法によりさらに濃縮すると,アミン類に対しては数十万倍の濃縮も可能であった。スウィーピング法に関して代表者らが最初に報告してから約1年半後に,別のグループから全く同じ原理に基づいているにもかかわらず,異なる濃縮機構を主張する論文が出版された。その論文では,試料溶液に高濃度の塩を加えてスウィーピングを行うと,より高い濃縮が可能なことを主張している。われわれはその理論に疑問を持ち,反論のための実験を行い,また理論的検討も加え,反論のための論文を投稿し,間もなく出版予定である。高塩濃度試料溶液を用いるとスウィーピング法の濃縮倍率は数倍程度上昇することは可能であるが,塩濃度を高くしすぎるとデスタッキングのために,かえって濃縮倍率が下がることを実験的にも,理論的にも明らかにした。スウィーピング法の濃縮原理は動電クロマトグラフィーに限らず,キャピラリーゾーン電気泳動においても,試料とイオン性錯体を生成するような錯形成剤を利用すると可能であることも明らかにした。糖類がアルカリ性条件下でホウ酸錯体を生成する反応を利用して,糖類の40倍のオンライン濃縮が可能であった。糖類の検出は紫外吸光検出器では短波長を用いても感度が低いが,濃縮法と組み合わせると1桁以上の感度向上が出来た。この研究成果も最近公表のために投稿した。
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