動物の群れが強弱に基づいていくつのサブグループに分かれてサブグループ内やサブグループ間ではどのような構造をとっているかを分析するため、対比較の線形モデルを使った尤度比検定とそのプログラムを開発した。この方法は強弱を定量的に表現できる点で優れている。だが、この方法が有効に機能するためには、(1)個体の各ペア(ダイアドと呼ばれる)について相当数の順位行動の観察数があること、(2)一度も負けない個体や一度も勝たない個体(あるいは他のサブグループの個体の間とでは一度も負けない個体や一度も勝たない個体)が存在しないことの2条件が必要である。(1)についてはパラメトリック・ブートストラップ法の適用で解決できたが、(2)については対比較の線形モデルと尤度の枠組みそのものがかかえる問題であることがわかった。そこで、一般的なランダマイゼーション検定を考察した。個体やサブグループの強弱について仮説がはっきりしているときには、先の(1)および(2)の条件下でもここで考えた一般的なランダマイゼーション検定が有効であることがシミュレーションで支持された。 さらに、強弱を間隔尺度で表現することをやめ順序尺度で表すことにしてブートストラップ法を適用し群れの順位制の構造を解析する方法を考案した。動物の群れの観察では順位制の観察データ以外には順位制の構造についての仮説がないと状況がよくあるが、このブートストラップ法はそういった場合にとくに適していた。
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