研究概要 |
従来,アクチュエータでは金属など硬い材料が用いられてきたが,直接人体に触れる医用機器など,用途によっては柔らかい素材によるしなやかな動作が求められる.また,軽量で柔軟な動きをするアクチュエータは,人工筋肉として,義手,義足や人工器官などに不可欠ある.そして,こうした柔軟なアクチュエータの素材として,導電性高分子や高分子ゲルが研究されている.ここでは,導電性高分子材料であるポリアニリンフィルムをとりあげ,機械工学的な立場で,構造,機構,制御の設計において求められる系統的な材料力学的知見を得るため,基礎的実験を行ない,伸縮率(ひずみ)と電気的負荷(電位)の関係を明らかにすることを目的として研究を行なった.今年度得られた主な成果と知見を以下にまとめる. (1)電解液(塩酸)中における電解伸縮を高精度で調べるための専用実験システムを構築した. (2)本システムは材料試験機と電位制御のためのポテンショスタットとファンクションジェネレータ,ならびに,制御・計測用パーソナルコンピュータから構成される.また,試料を電解液に浸して実験を行なうため,テフロン製のチャックとガラス容器を装備している. (3)電圧上昇に対するフィルムの時間応答はS字形である.すなわち,電圧に対して応答しない領域,応答するが鈍感な領域,急激に応答する領域,および,飽和する領域からなる. (4)上記において,ひずみの飽和値はおよそ9%である. (5)フィルムの応答には時間遅れがある. (6)電圧を下降させ,元の値に到達しても変形が残留する. (7)繰返し電圧に対する応答として,静的な最大ひずみ(変位),および,電圧降下後の残留ひずみは,繰返しにともなって増大する.
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