研究概要 |
微小構造物では界面や表面の割合が多く,その原子レベルの構造不整と変形拘束が原子レベルの機械的特性(応力や弾性係数等)に局所的な不均一性をもたらし,破壊の原因となる.安定した機能発現のためには,原子レベル構造とともに変形に対する安定の評価が不可欠である.本年度は,(1)分子動力学による大規模引張り解析,(2)第一原理解析に基づく原子間ポテンシャルの検証,(3)第一原理解析による原子鎖の引張り解析,を行った. (1)では,表面が会合するコーナー部分から発生する転位に着目した.引張り変形が進行するとともに,コーナー部分の変形抵抗性が低下し,局所的に不安定(外力の増加なしに変形が進行する状態)になったときに,その部分のひずみが増加して転位が発生する.その不安定性は弾性係数のマトリックスから判断ずることができる. (2)では、大規模集積回路としてもっとも良く用いられているシリコンと絶縁層のSiO_2のポテンシャルについて検討した.並列化第一原理計算について工夫して計算効率を向上させるとともに,フォースマッチング法を用いて多数のパラメータを最適に決定した.機械的特性についても検討し,良好に再現できることを確認した.界面近傍の変形等への応用について考えている. (3)では,アルミニウム原子鎖に引張り変形を加えた場合の剛性の変化について検討した.とくに,結合が切断される不安定点における挙動を中心に,バルク材料の引張り変形過程と対比させながら考察を進めた.原子鎖では原子間隔が短く、強度は高いが、破壊は脆性的で伸びも小さいことが判明した.
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