研究概要 |
本研究では,あたかも聴診器で人体内の病巣を検査し的確な処置を行うように,機械構造物の外部に超音波受信子や送信子を取り付けて構造物内部の欠陥を的確に検査する方法について実験的研究を行い,機械構造内部の修理・再生加工を行うことが出来るようにするための基礎研究を行った. 具体的には,軸受の破損,構造物内のリブの剥離,ボルト結合部のボルトのゆるみ,異常振動箇所の位置探査,について超音波を使って行った. 本研究を行った結果,次の結果が得られた.(1)軸受の外輪に破損個所がある場合には,破損個所を転動体が通過するたびに弾性波が発生し,その弾性波が外輪から構造物へ伝播する.このため,構造物外表面に取り付けた超音波受信子で弾性波を検出することができる.また,この弾性波の発生周期は軸受の回転数や軸受の種類(転動体の数や外輪の径など)により変化するため,周期から破損した軸受を特定することができる.(2)構造物のリブに向けて表面波を送信してリブの反対側で受信すると,リブが剥離した場合にはその受信は振幅が大きくなり,剥離を検出できる.(3)ボルト結合部表面に縦波超音波送信子を取り付けて縦波を送信し,同表面で受信した結果,ボルトの締め付けトルクが小さくなると,つまりボルトがゆるむと受信波の振幅が大きくなり,ボルトのゆるみを検出できる.(4)複数個の受信子を構造物表面に取り付けて受信波の位相を測定することで異常振動源を推定することができる.以上のように,本研究により,超音波を使って構造物内部の故障個所を探査できることが明らかとされた.
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