研究概要 |
液晶(4,4'-Dihexylazoxybenzene(DAN))をポリマー(Polystyrene(PS))に含浸させたフィルムを作製した.このフィルムにプローブを接触させて摺動したときの摩擦力を,カンチレバー式の高精度摩擦力測定装置で測定し,温度(温度によりDANが相転移する),速度及び電場強度を変えた場合の摩擦特性を明らかにした.また,このフィルムに電場を印加した際の摩擦特性を明らかにした. フィルムに含浸されているDANがスメクチック相のおよび結晶相の状態では,DANの流体としての性質は極めて小さい.よって,フィルムとカンチレバー先端との潤滑形態は,流体潤滑とはならず境界潤滑となることを明らかにした.また,これらの相においては,電場を印加した場合に,ER効果が得られないことを明らかにした. DANがネマチック相の状態では,摩擦力は流体潤滑にも境界潤滑にも属さない摩擦特性を示すことが明らかになった.この相では,液晶構造を持ったDANをせん断しながらプローブが摺動する.よって,そのせん断力が摩擦力発生要因の一つであることが明らかになった.また,この相に電場を印加した場合,摩擦力が増加することが明らかになった. DANが等方相に相変化する温度では,摺動速度が速くなると摩擦力が大きくなった.これは,一般的な流体潤滑と同様に,等方相の液晶分子のせん断抵抗が,摩擦力発生に大きく関与したためと考えられる.また,この相に電場を印加した場合,面圧が高く摺動速度が遅い状態では,潤滑膜の生成により摩擦力が減少し摺動速度が速くなるとDANの粘性抵抗により摩擦力が増加すること,他の相と比べて最も大きなER効果を発生させることが明らかになった. 電場印加の結果より,等方相のDANに電場を印加した場合と,ネマチック相のDANに電場を印加した場合の,DANの分子挙動は同等である可能性を示唆できた.
|