研究概要 |
パーフルオロポリアルキルエーテル(PFPAE)の摩耗特性を,接触面圧0.15GPa程度で摩耗がほとんど生じない潤滑条件で評価した.官能基修飾を施したPFPAE誘導体をPFPAEに10wt%程度添加すると基油の摩擦特性に影響を与える.ここで,摩擦係数を下げる誘導体と,逆に摩擦係数を上げる誘導体があることを見いだした.前者は基油と比べて20%程度の摩擦低減を実現し,繰り返し実験では安定した性能が観察された.これは摩擦低減剤として有望ではあるが,添加量の低減が実現しないと実用化は難しい.一方,摩擦係数を上げる誘導体は,摩擦面に反応被膜を形成していることが推察され,これが耐摩耗性をもつ可能性が考えられる.しかし摩擦と摩耗を同時に低減する添加剤の開発には至らなかった. PFPAE誘導体の性質を分子動力学法によるコンピューターシミュレーションで推算し,これを摩擦試験の結果と比較することによるメカニズム解析を試みた.PFPAE以外の合成油に対するこれまでの研究から摩擦・摩耗の低減に有効とされる官能基を数種類選び,PFPAEの基本骨格に誘導したモデル分子のシミュレーションを行った.一般に摩擦低減剤の効果は金属面に対する吸着性が大きいほど低濃度で効果を発揮する.分子の双極子モーメントを代表値としてこの吸着性を比較検討した.しかしながら,PFPAEに誘導した官能基の種類や誘導位置と分子の双極子モーメントには明確な相関は見られなかった. 本研究では分子構造とその作用機構に明確な説明ができなかったものの,PFPAEの摩擦を低減する分子構造としてPFPAEの誘導体が有望であることを示した.
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