研究概要 |
Taylor渦を利用した血液等におけるダイナミックフィルタの開発を目指し,本年度行った実験より以下の知見を得た. 擬似血液モデルについては,赤血球と同程度の直径約7μmを想定した藻類葉緑素系の微生物を試験的に培養し,固液混合相を調整した.ただし現段階では試作したTaylor渦発生装置に入れて試験するまでには至っていない.その理由は,固液相は高濃度になるため,PIV(Particle Image Velocimetry)可視化装置のレーザが中まで透過できず,Taylor渦が濃度分極を消散する効果を確認できないからである.このためTaylor渦によるフィルタの開発を優先させた.すなわち,ヘマトクリット値(赤血球が血液中を占める割合)が約40の正常血液とゼロ剪断条件で同程度の粘度になるようにグリセリン水溶液を調合し,また除去される物質として100μm程度のアルミナ粒子をレーザ光が透過できる範囲内で多量に混入させることによって,濃度分極の消散による膜分離が効率よく達成できるかどうか調べた. この結果,隙間25mm,アスペクト比(装置の隙間と高さの比:Γ)3程度の比較的コンパクトな実験装置において,まず内円筒(フィルタ)を回転させない従来のフィルタ型で吸引濾過させたとき,循環流量300ml/minでは約20minでアルミナ粒子がフィルタ表面に多量に付着する現象が観察された.これに対し,内円筒を回転させ,Taylor渦を発生させると,Reynolds数(代表長さ:隙間,代表速度:内円筒回転速度)300〜600の範囲で,1時間以上の運転でも内円筒表面にはアルミナ粒子は殆ど付着せず,効率的な分離が達成された. またΓ=1前後では振動モードが発生することも判明し,これを使えば更に効率的な分離ができることも予想された. 可視光での高濃度固液相内の渦構造測定には無理があり,現在超音波流速計による測定を検討中である.以上基礎解析から,Taylor渦による効率的なフィルタの実現は高いと考える.
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