研究概要 |
初年度は,直径3mm,肉厚0.1mm,長さ1.1mのステンレス製パイプを柔軟ブームモデルとして用いて,購入した半導体レーザ装置の加熱能力確認試験を行い,振動制御に必要な熱ひずみを与えるのに十分と思われる加熱前面と後面の温度差の得られることを確認した.今年度は,振動制御を行うにあたってレーザービームを断続的にブームモデルに照射するためのレーザービームカッターをまず試作し,吊り下げ支持されたブームモデルの自由端に集中質量を取り付け,1次の固有振動数を1.4Hzに調節したブームモデルに,試作したビームカッターを用いて一定パルス幅のレーザーを照射する実験を行った.周波数1.34Hzのパルスビームをブームに照射したとき,ブームは共振状態になった.共振周波数がブームの固有振動数と異なったのは,レーザービーム照射によるブーム温度の上昇に伴うブーム物性値の変化によるものと思われる.周波数1.33Hzのパルスビームを照射した時ブームの振動はうなり状態となり,振幅の増大期には温度変動の位相は振動の位相よりほぼπ/2遅れ,振幅の減少期には温度変動の位相は振動の位相よりほぼπ/2進んでいた.このことは,振動しているブームに照射するレーザーのパルス幅を適切に制御して,ブームに生じる温度変動の位相を適切に制御することにより,ブームの振動を制御できることを示している.そこで,レーザー変位計により計測されたブームの振動変位に対応してレーザービームカッターの開閉を制御して,パルスレーザーのパルス幅を制御する回路を設計・試作した.初期変位を与えて振動させたブームモデルに対する,レーザービームカッター制御回路を用いた振動制御実験では,無制御時には数分持続する1次モードの自由振動を十数秒で初期振幅の1/5に納めることができ,さらに途中で擾乱を加えた場合においても制御することができた.
|