研究概要 |
本研究は、次世代の光-電子融合集積回路を実現するための基本素子として、シリコン基板上にエピタキシャル結晶形成可能な絶縁体と半導体の積層超格子を用いた量子井戸サブバンド間遷移レーザを理論的に提案し、その実現のための基礎研究として、シリコン/弗化カルシウム(CaF_2:絶縁体)および弗化カルシウム(CdF_2)/弗化カドミウム(CaF_2)ヘテロ超格子の結晶成長技術の確立、及びレーザ素子実現への基礎となる実験的・理論的研究を目的とする。 この目的を達成するため、本年度は以下の成果を得た。 本年度は、超格子形成に用いる材料として、弗化カルシウム(CaF_2)および弗化カドミウム(CdF_2)を用い、この材料系を用いた超格子結晶成長と、2重障壁共鳴トンネルダイオード構造を用いた超格子サブバンドの形成確認、およびその精密制御に関する研究を行った。 基板としてシリコン(111)を用い、熱酸化によって形成した15nm厚の酸化膜に、電子ビーム露光法により100nm〜400nmのサブミクロンの微小孔を形成した。この微細孔中へ数原子層オーダーの膜厚を有する弗化カルシウム、弗化カドミウム二重障壁共鳴トンネルダイオードを形成する。微細孔への成長により、弗化カルシウムの成長初期過程におけるピンホール欠陥を抑制し、素子特性の安定性・特性の均一性向上を目指した。その結果、微細孔サイズが400nmでは、ほとんどパターニングの効果は見られなかったが,微細孔サイズを200nm以下では、共鳴トンネルダイオードの室温微分負性抵抗特性の均一性/安定性に顕著な改善が見られるとともに、微分負性抵抗のピーク電流を与える電電圧値の均一性が著しく向上し,膜厚の制御精度が一原子層以下の正確さを有することが実験的に確認された。 この成果により,本研究で提案する弗化物系ヘテロ構造を量子効果デバイスへ応用する足がかりが得られた。
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