研究概要 |
本研究課題においては ・学習過程における知識獲得と内部モデルの形成との関係 ・非最小位相系の学習則の確立 を主な目標とした.学習システムにおける知識獲得は,ことに運動制御などにおいては,単なる入出力関係の模擬だけではプラント変動,環境変動などに対して対応できないことが知られている.このような状況において真に知識を獲得したと言えるには,外部の知識のモデルが学習システム内部に取り込まれることが必要であると考えられる.このような内部モデル原理が学習システムにおいて成り立つことを,ニューラルネットを制御器に用いた運動制御システムによって検証した.その結果 ・系の学習が環境変化に対してロバストである場合には,近似的な内部モデルが形成される ・しかしその内部モデルは線形システムにおけるような厳密なものではなく,入出力のゲインを高くする近似的なものである ・このような近似的モデルが形成された場合は,環境変動に強いシステムが構成される ことが明らかとなった.またこのような運動制御システムにおいて,非最小位相系の学習は,逆システムの不安定性から従来困難とされてきたものである.本研究では,多周期サンプリングを施し,マルチレート系とすることにより,不安定な零点を除去することによって適応的学習則を与えることが可能となった.これにより,より広範なシステムに対して内部モデル原理の検証が可能となり,学習システムと内部モデルの関係が明らかとなった.本研究課題では,近似的な内部モデルが運動学習システムの知識獲得において大きな役割を果たすことを明らかにした.これを離散事象系を含む一般的な非線形システムや人工知能システムなどに拡張することが今後の課題である.
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