研究概要 |
沖縄県石垣市名蔵川河口部に存在するマングローブ水域を対象として,マングローブ水域の地形・土壌の物理・化学的特性,潮汐に伴った有機物,栄養塩の輸送に関する現地観測を実施した.現地観測では,観測対象地地形測量,マングローブ林の立木密度,オヒルギの膝根密度,マングローブおよび河川内土壌の粒度分布,土壌中窒素・リン・有機物量,河川水内の窒素・リン・有機物,リター量の計測を行った.観測の結果,マングローブ土壌は,河川内の土壌に比べて,土壌の平均粒径が小さく,有機物や栄養塩の含有量が大きいことが明らかになった.また,マングローブ林内に多数存在する小水路(クリーク)内の土壌は特に有機物や栄養塩の含有量が大きいことが明らかになった.小潮期には,クリークを通じて,マングローブ域から河川内へと有機物・栄養塩が輸送されることが明らかになった.マングローブ土壌の地下水は還元性が強く,その結果,地下水中の溶存無機態窒素の多くはアンモニア態窒素で存在していることが明らかになった.大潮期には,マングローブ林から落葉したリターが河川内を大量に浮遊するようになるが,これらのリターは,マングローブ水域とその河口部に存在するラグーンの間で往復運動をしており,それらがマングローブ域内に生育する生物の生理活動によって分解され,粒子態や溶存態の有機物・栄養塩としてマングローブ水域から沿岸域へと供給されていることが明らかになった.
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