研究概要 |
我が国の地方中枢,中核都市は,今後とも都市化の進行が予測される.都市化の背景には集積の経済すなわち外部経済が存在するのはいうまでもないが,その一方で,都市問題と総称されるものを始め,都市化に伴う様々な社会的費用,言い換えると外部不経済が発生している.本研究は,都市化に伴う外部性に関して,特に外部不経済の計測方法を確立することにより,都市成長に対する長期的な戦略構築のための分析方法を構築することを目的としている. まず,これまで研究されてきた外部性について,既存の分類とは別に,宅地開発,居住,交通別に,外部性の観察される現象,発生主体・受取主体,外部性発生による効率性阻害要因,不可逆性の有無および時間的な長さなどの視点から整理した.特に,宅地開発について,郊外居住者が自動車を使って通勤・買い物などのトリップを行なうときに発生する外部性では,通常指摘される都心混雑増加による外部費用が大きな値になるとともに,局地的な大気汚染や騒音の外部費用も含めて,外部性発生主体の居住地と実際に発生する空間的な場所が違うために,計測がより困難であることを指摘した.それらを踏まえて,特に,郊外宅地開発を対象に,外部性発生主体と受取主体の場所が異なることを明示的に取り扱いながら,その発生メカニズムを整理した.発生メカニズムとして,主体,経済活動としての行為,本来の目的とは異なる影響としての副産物,その副産物の空間的な分布状態,外部性発生というステップに分離し,各段階で一般的な計測モデルを構築した.計測モデルは簡便に計測できるように線形関係のベクトルで表現されるものの,仮想的な数値に対して,郊外宅地開発による外部不経済の帰着分布を計測できることを確認した.これにより,地理情報システムを用いた土地利用・交通モデルに基づく実際の計測の可能性を確認し,また,その構築のための十分な準備を行った.
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