| 研究概要 |
付着特性は,鉄筋コンクリート構造物において最も基本的な特性のひとつである。にもかかわらず付着に関する破壊力学的アプローチが進んでいない理由は主に二つあると思われる。第一の理由は,付着破壊が曲げ・せん断と違って三次元的破壊現象であるため,通常の二次元解析が適用できないことである。第二の理由は,付着破壊という現象が,異形鉄筋の節の前面におけるミクロ的な破壊と,鉄筋の表面からまわりのコンクリートへ広がるマクロ的なひび割れとがからみあう複雑な現象ということである。
本年は,有限要素法を用いた解析的研究を行った。解析にあたっては,破壊力学を考慮した。また,鉄筋のまわりに一様な変位を与えられるように,剛性の高いリングを設定した。解析パラメータは,昨年に行った実験と対応するように,下記の3種類とした。
1.鉄筋径:20mmから60mmまで
2.かぶり厚さと鉄筋径の比:1倍から3倍まで
3.横補強筋量:ゼロから1%まで
上記の解析により,次の結論が得られた。
1.横補強筋によりコンクリートに強い拘束力が働いた状況下において,寸法が付着強度に及ぼす影響は小さい。
2.かぶり厚さが大きく,主筋まわりに強い拘束力が働いた状況下においても,寸法が付着強度に及ぼす影響は小さい。
3.逆に,横補強筋がなく,かぶり厚さが小さい場合には,寸法が付着強度に及ぼす影響がきわめて大きく,鉄筋径の0.5乗に達する場合もある。
4.付着強度に関する寸法効果は,主に周囲のコンクリートが割裂き破壊することにともなうものであり,ふし前面の局所的破壊は寸法効果に影響しない。
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