研究概要 |
既存のパルスレーザー堆積装置を改良して、コンピューターにより複数の異なるターゲットを交互にレーザーでアブレーションして組成を自動制御することが可能になった。その手法で酸化亜鉛にMnをドープしたエピタキシャル薄膜を作製して、結晶構造・光吸収・磁気抵抗測定の結果から、世界ではじめて酸化物ベースのII-VI族希薄磁性半導体であることを検証した[T.Fukumura et al.,Appl.Phys.Lett.,75,3366(1999).]。この結果に刺激されて酸化亜鉛ベースの希薄磁性半導体の室温強磁性の可能性が理論的に指摘された[T.Dietl et al.,Science 287,1019(2000);K.Sato et al.,Jpn.J.Appl.Phys.39,L555(2000)]。引き続き、酸化亜鉛に3d遷移金属イオン各種類のドープを行い、熱力学的固溶限界を上回る濃度のドーピングに成功した[Z.Jin et al.,J.Crys.Growth 214/215,55(2000).]。そして、各イオンに対して、熱力学的に非平衡な条件における固溶限界を求めることに成功した。その一連の試料に対する光吸収や磁気抵抗測定の結果から、遷移金属イオンの種類により各性質が大きく異なることを見出した[Z.Jin et al.,Physica E,印刷中]。そして、磁気測定の結果から前述のn型酸化亜鉛ベースの希薄磁性半導体のいくつかで強磁性になるという予測が少なくとも3K以上では誤りであることを証明した[Z.Jin et al.,投稿中.]。さらに詳細な磁気測定により、Mnドープn型酸化亜鉛では、これも理論的な予測の反強磁性とは異なり、スピングラスの性質を持つことを見出した[T.Fukumura et al.,Appl.Phys.Lett.78,958(2001)]。Coドープ酸化亜鉛では、低温で大きな磁気光学効果を見出した[K.Ando et al.,投稿中]。また、酸化亜鉛と同じく酸化物半導体としてよく知られている酸化チタンにCoをドープすることで、室温強磁性が発現することを発見した[Y.Matsumoto et al.,Science 291,854-856(2001)]。
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