研究概要 |
研究の目的と計画 希土類イオン含有ガラスを分相させることによって生じる不均質界面での光散乱を利用すれば蛍光の発光効率が大きな透明ガラスセラミックスを作製できるので蛍光強度の増大メカニズムを詳しく解析するとともに,異なる分相処理条件(熱処理温度・時間,超音波表面前処理(UST))で作製した分相ガラスの蛍光強度,分相組織と組成,フォノンサイドバンド,蛍光寿命を検討して光閉じ込め効果など分相界面での光散乱現象を利用した高効率発光材料の作製を試みる。 成果の概要 分相ガラスを希土類イオンの光学ホストとして用いてその発光特性と分相の度合いとの相関を検討した。分相したほう珪酸塩ガラス(6Na_2O・31B_2O_3・63SiO_2[mol%]・5Eu_2O_3[wt%])の吸収スペクトルと蛍光スペクトルの測定を行ったところ,吸光度と蛍光強度は共に均質なガラスに比べて増大した。吸光度が増大したのは分相によって生じた界面による光散乱が増大したためである。蛍光強度が増大したのは界面により励起光が散乱され,発光に関与するEu^<3+>の数が増加したことによる。さらに詳細な検討を行うためにバイノーダル分相をする13.6NaO_<0.5>・43.6BO_<1.5>・42.8SiO_2・1.0EuO_<1.5>について定量的検討を加えたところ,分相処理温度を700℃に固定し熱処理時間を変化させた場合,蛍光強度は熱処理時間が約6時間までは増大し,それ以降はわずかながら減少した。熱処理時間6時間までは分相によって生じた界面により励起光が散乱され発光に関与するEu^<3+>の数が増加する効果が支配的であり,それ以降は蛍光波長付近の透過率が低下し,ガラス外に放出される蛍光が減少する効果の寄与が支配的になるものと考えられる。蛍光強度が極大を示したガラスでの分相粒径は約300nmであった。時間を固定し,温度を変化させて熱処理した場合,蛍光波長付近(600nm)の光散乱の寄与が小さい時は蛍光強度は励起波長付近(460nm)の光散乱強度に大きく依存することが分かった。散乱粒子が波長と同程度の大きさの場合,光散乱はミーの散乱理論で説明できる。散乱粒子が小さい時には散乱光強度の角度分布は前方散乱と後方散乱がほぼ等しいが,散乱粒子が大きくなると前方散乱が大きくなる。熱処理時間が長くなるに伴い分相粒が大きくなると前方散乱の方が大きくなるために散乱強度は強くなる。しかし熱処理時間が長くなるに伴い蛍光波長付近の透過率が低下しガラス外に放出される蛍光が減少するために熱処理時間が約6時間で蛍光強度が極大を示したものと考えられる。 次にCaO-Al_2O_3-SiO_2系ガラスの表面にEr^<3+>・Yb^<3+>ドープCa_2Al_2SiO_7結晶層が析出した透明表面結晶化ガラスをUST法で作製した。この結晶層はガラスより屈折率が大きいので入射光を表面結晶層に閉じこめ光導波させることができた。この結果より,光増幅機能を有する光導波路スラブの作製に関する基礎が確立できた。
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