研究概要 |
ガラスの高靭化に関する研究はまだ緒についたばかりで,ガラスの組成系により靭性の大まかな値がどの程度になるかを把握する必要がある。また,モードI破壊における靭性以外に,最近はハードディスク基板やフラットパネルディスプレイへの要求から,スクラッチ硬度などの評価が重視されるようになってきている。そこで本研究では不活性雰囲気中,種々の温度でクラック伸長試験を行い,Subcritical crack growth挙動について,鉛ガラス、Li_2O・2SiO_2ガラスおよびソーダ石灰ガラスの比較を行った。また、同時にそれらのガラスについて,スクラッチ硬度およびビッカース硬度の測定も行った。 クラック伸長挙動については,通常の溶融法で作製したガラスを加工し、中央に小孔をもつ角柱状のDCDC試験片を作製した。破壊試験機(INSTRON1362)を用い、恒温槽中で圧縮応力を負荷することによってプレクラックの生成およびクラックの伸長を行った。第III領域の破壊について得られたKrv曲線の結果を,v=Aexp{(-E^*+bK_<I2>)/RT}の式でフィッティングしたところ,見かけの活性化エネルギーであるE^*の組成依存性から,第III領域での破壊はガラス構成元素の拡散やクラック先端付近の流動変形によって律速されるのではなく,クラック伸長における結合開裂反応の反応律速であることが判明した。また,瞬間破壊の破壊靭性値が,第III領域の破壊の挙動を基にして,前記の式のE^*/bによって予測可能なことが判明した。 また、スクラッチ硬度およびビッカース硬度の測定も含め,鉛ガラスが最も脆く,逆にLi_2O・2SiO_2ガラスは高靭性でソーダ石灰ガラスはその中間に位置することが判明した。さらに,スクラッチ硬度は,第III領域での低速亀裂進展,破壊靭性値,ヤング率,ビッカース硬度などと比較して,大きな組成依存性を示すことがわかった。
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