研究概要 |
本研究の目的は,いまだ不明な部分の多い流体混合の機構を,非線形ダイナミクス理論とニューラルネットワークモデルを組み合わせて新しい混合理論を開発し,それを用いて混合機構の解明を行うことにあった.2年間の研究を通じて,混合過程を表す新しい離散写像モデルの構築に関してはほぼ当初の目的を達成したが,それを用いた混合系の数学的構造の解明は始まったばかりで,まだ多くの解決すべき課題が残されている. 1.撹拌操作とは,秩序性の高い未混合状態を入力情報とし,より秩序性の低い良混合状態を出力するダイナミカルシステムであると捉えることにより,混合過程のモデル化を行った. (1)混合状態をベクトルで表現し,混合過程を混合ベクトルの変換操作と見なした.この変換行列は,流体要素の連続的運動を表すNavier-Stokes方程式をラグラジアン的に時間積分した結果を離散化表現し,写像行列として再構成することにより決めた. (2)流体の連続条件を考慮して,変換行列を一対一写像行列に制限した.この写像行列の構成には,ニューラルネットワークモデルの組み合わせ最適化法と新しく開発した領域2分割法を併用して,高速かつ高精度の一対一写像行列を構成するアルゴリズムの開発に成功した. 2.得られた写像行列の数学的構造解析を通じて,混合系の非線形力学的構造の解析を行った. (1)変換行列を正規化することにより混合系全体を不変部分空間に分割し,それらを用いて良混合領域と不良混合領域の分離・識別する方法を示した. (2)良混合領域の混合性能を示す指標として新たに混合能の概念を導入し,それを用いて流体系の混合性能を定量的に評価する手法を開発した.
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