研究概要 |
基底状態のオリゴパラフェニレンは,気相中や溶液中では隣り合う芳香環同士が互いにおよそ20度程度捻れた構造を取り,光励起状態では共平面状態になるという構造変化を引き起こす。さまざまなオリゴフェニレン誘導体の光物性を高圧条件下に測定し,吸収,蛍光スペクトルの長波長シフトと,吸光度の増加,蛍光量子収率の減少が観測された。これらの変化は,圧力の増加に伴う溶媒の誘電率が上昇したために起こる基底状態分子への作用と,溶媒の粘度が上昇したことに伴う,励起状態での構造緩和過程への作用とによることが明らかとなった。一方部分フッ素化パラフェニレン類は,基底状態で会合体を形成するが,圧力の上昇に伴い会合体の形成が促進されることが明らかとなった。また励起状態では,構造の緩和過程が促進されるため,発光量子収率の増加が観測された。パラフェニレン類のこれらの光物性の変化は,圧力の印可に伴う溶質分子,あるいは溶媒分子との間の分子間相互作用の増強によることを明らかにした。 アゾベンゼンとソのぺルフルオロ体の光異性化反応を希薄溶液中高圧条件下に測定し,異性化の速度,および定常状態でのcis-trans比を求めた。圧力が高い場合にはtrans体の生成比が増大し,励起中間体から基底状態のtrans体への失活過程の活性化体積が小さいことが判明した。一方,これら両化合物の1:1混合溶液の場合,逆に圧力の印可に伴いcis体の生成比が高くなった。これは両化合物が溶液中でスタック型の会合体を形成しており,cis体の会合体の方がtrans体よりも安定であることを示している。
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