研究概要 |
本研究では,1次元から3次元の空洞構造を有する無機化合物(ホスト)への原子・分子挿入反応を超高圧力下で行い,静電的あるいは分子間相互作用を駆動力として行われてきた従来のインターカレーション反応とは異なる,超高圧条件がもたらす系の体積減少効果に着目した新しい反応設計を行うことを主眼とした. 1次元(トンネル)〜3次元(空孔)空間を有する無機化合物ホストと,ゆるやかに結合したゲスト種とのホスト-ゲスト相互作用による母材料の機能制御・新機能発現を目指し、新たな材料設計指針を構築することを目的とした.1次元空洞構造としてVS_6八面体2×2サイズのトンネルを有するA_xV_5S_8を高圧合成し,常圧合成に比べてトンネル内の原子占有比の高い化合物を得た.得られた物質は高い電子伝導性を示した.一方,3次元空洞構造であるスクッテルド鉱型構造を有する無機ホストへは,超高圧力下において種々の金属原子の挿入が実現できることを明らかにした.この反応は圧力の上昇とともに容易に進行し,8GPa領域においては母格子の空洞をゲスト原子で完全に占有することが可能であった.母体とゆるやかに結合したゲスト原子の挿入は,母体の半導体性を失うことなく,母格子内で大きな熱振動を示し,"rattling効果"による熱伝導率の大幅な低減をもたらすことがわかった.空隙サイズと挿入原子のサイズにより,母格子中での挿入原子の原子座標や熱振動に違いが現れることも判明した.本手法により得られたSn_xCo_4Sb_<12>化合物は,スクッテルダイト系としては最も低い熱伝導率を示し,かつ大きな熱電能と高い電気伝導度を示すことから,熱電変換材料として有望である.
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