研究概要 |
本年度は、より高いウリジン認識能をもつ非環状レセプターの開発およびシクロファン型レセプターの合成と機能について検討し、以下の成果が得られた。 1、デカノイルクロリドおよびブロモアセチルブロミドを用いる2,6-ジアミノピリジンの段階的なアシル化反応により、前駆体の2-(ブロモアセトアミド)-6-デカナミドピリジンを合成した。この前駆体と3-ヒドロキシピリジンとの反応により、目的の非環状レセプターである6-デカナミド-2-(3-ピリジルオキシアセトアミド)ピリジン(DPP)の合成に成功した。DPPは、CDCl_3-DMSO-d_6(90/10)溶液中において、ウリジンと1:1水素結合性錯体を形成し、これまでに本研究で開発した非環状2,6-ジアミドピリジン型レセプターの中で最も高いウリジン認識能を発現することを明らかにした。 2、トリル酢酸より誘導したクロロメチルフェニルアセチルクロリドと2,6-ジアミノピリジンとの反応により、前駆体の2,6-ビス(クロロメチルフェニルアセトアミド)ピリジンを合成した。この前駆体と2,7-ジヒドロキシナフタレンとの反応により、目的の環状レセプターであるナフタレノピリジノファン(NPP)の合成に成功した。NPPは、CDCl_3溶液中において、ヌクレオシドの構成単位のチミンおよびウラシル誘導体と1:1水素結合性錯体を形成することを明らかにした。さらに、NPPは錯形成時にゲスト分子に対して誘導適合して、ホスト-ゲスト間にπ-π相互作用のみならず電荷移動相互作用が働き得ることも見出した。また、錯体の安定性は、ゲスト分子中の2個のカルボニル酸素原子の電子密度に依存することも明らかにした。
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